あひるの仔に天使の羽根を
・一脈 櫂Side
櫂Side
****************
「櫂、ちょっとこっちに来い!!」
芹霞と須臾が部屋から消えた直後、煌に隣の部屋に連れられた。
まだふらふらと身体が揺れているらしく、俺を連れるというよりは、俺が荒い息繰り返す煌を支えながら歩いたのだけれど。
「おい……本当に大丈夫か?」
全員で無理やり飲ませた解毒剤らしきもの。
もし劇薬なら、今頃煌は此処には居ない。
玲が手に入れたものだから。
ただそれだけで、煌に飲ませたのは信念にも似た条件反射のようなもの。
一か八かの賭けのようなもので、ほんの少しだけ躊躇いがあったことは黙っておく。
「大丈夫だ。……死ぬかと思ったけど」
少しだけ。
恨めしげに睨まれた。
何だか暴れ犬の注射の現場に立ち会ったかのような、そんな気分になって俺は思わず笑ってしまった。
「……俺より。お前の方こそ、大丈夫なのか?」
ソファの背凭れに仰け反るようにして大きく座った煌が、顔だけこちらに向けた。
気だるげな様子とは裏腹に、痛いくらい真っ直ぐな褐色の瞳。
「酷え面だぞ、俺がお前に言うのも何だけど……」
「大事無い……」
俺は苦笑した。
「んなわけねえだろうがよ。……お前、芹霞とどうしたよ?」
「……」
「気味悪ぃんだよ、芹霞も。昔あったよな、あいつのあの不気味な笑い」
「……」
「あいつはもろ感情が表に出る奴だ。それがあんなになるまで何かを我慢するなんて、どうせまたお前絡みだろうが」
「……」
「あいつはいつだって、お前は特別だから」
それは消えるような小さい声で。
「……お前は本当に、俺が特別だと思うか?」
「ああ。……妬ましいくらいに」
不機嫌そうな精悍な顔を
「あいつは…俺には"永遠"を望んだことねえし。きっと玲だってねえだろ」
横に背けた。
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「櫂、ちょっとこっちに来い!!」
芹霞と須臾が部屋から消えた直後、煌に隣の部屋に連れられた。
まだふらふらと身体が揺れているらしく、俺を連れるというよりは、俺が荒い息繰り返す煌を支えながら歩いたのだけれど。
「おい……本当に大丈夫か?」
全員で無理やり飲ませた解毒剤らしきもの。
もし劇薬なら、今頃煌は此処には居ない。
玲が手に入れたものだから。
ただそれだけで、煌に飲ませたのは信念にも似た条件反射のようなもの。
一か八かの賭けのようなもので、ほんの少しだけ躊躇いがあったことは黙っておく。
「大丈夫だ。……死ぬかと思ったけど」
少しだけ。
恨めしげに睨まれた。
何だか暴れ犬の注射の現場に立ち会ったかのような、そんな気分になって俺は思わず笑ってしまった。
「……俺より。お前の方こそ、大丈夫なのか?」
ソファの背凭れに仰け反るようにして大きく座った煌が、顔だけこちらに向けた。
気だるげな様子とは裏腹に、痛いくらい真っ直ぐな褐色の瞳。
「酷え面だぞ、俺がお前に言うのも何だけど……」
「大事無い……」
俺は苦笑した。
「んなわけねえだろうがよ。……お前、芹霞とどうしたよ?」
「……」
「気味悪ぃんだよ、芹霞も。昔あったよな、あいつのあの不気味な笑い」
「……」
「あいつはもろ感情が表に出る奴だ。それがあんなになるまで何かを我慢するなんて、どうせまたお前絡みだろうが」
「……」
「あいつはいつだって、お前は特別だから」
それは消えるような小さい声で。
「……お前は本当に、俺が特別だと思うか?」
「ああ。……妬ましいくらいに」
不機嫌そうな精悍な顔を
「あいつは…俺には"永遠"を望んだことねえし。きっと玲だってねえだろ」
横に背けた。