あひるの仔に天使の羽根を
「そ……なんだ」
きつく握られた拳がぶるぶると震えている。
「よ…よよよ、良かったじゃねえか。
ふ、ふふふ…雰囲気…よよかったもんな。
俺……見ちまって…はははははは」
ぽたり。
「お、おおお前……芹霞…一筋だもんな。
俺…より年季…はいってるもんな……。
だけど…俺……だって…」
ぽたり。
綺麗な雫が、立て続けに膝に落ちて。
「こ、煌…・・・お前泣いて……?」
すると煌は俯いたまま、乱暴に袖口で目元を拭った。
そして。
「…お、おめでとう」
赤い目を潤ませて、煌は笑った。
ぎこちなく、俺に祝福の言葉を遣して。
だから俺は――
「……違うんだ」
煌から顔を背けた。
「違うからこんなになってる。
伝わらないんだ……」
「は?」
もう一度目元を拭いながら、煌は素っ頓狂な声を出す。
「言葉に出しても、まるで芹霞に伝わらない」
そう言葉を紡いだ後、ちらりと横目で伺い見る煌の顔は。
唖然。
そんな顔で固まっていた。
赤い目を見開き、口をぽかんと開けて。
俺の言葉が理解できないというように。