あひるの仔に天使の羽根を
思えば。
煌と芹霞についての話を2人でしたのは初めてかもしれない。
いつもいつもお互いの顔色伺って、
想像だけで不安になって。
この先もきっと不安になるだろう。
この先もきっと嫉妬するだろう。
それでもきっと俺達の仲は変わることなく。
それだけを煌に願う。
本気で芹霞を取りに来るというのなら、
俺だって本気で芹霞を取りに行く。
何処へ?
まだまだ俺にはやるべきことが多いけれど、
それでも煌のおかげで俺は笑えるのなら。
「ありがとうな、煌。
俺も覚悟決めたから……」
煌が無言でずびっと鼻を啜った。
「お前の本気に応えて、俺も本気出すから」
更に無言のまま、鼻の啜る音が聞こえる。
「お手柔らかに、よろしく」
そう言って、俯き加減の煌の顔を伺いみれば、
煌の顔が真っ青で。
「や……ば…。
俺……やっちまった?
やっぱ俺って、救いようねえ馬鹿……?」
そんな落ち込んだ独り言は聞かないフリをして。
その時、隣の部屋で言い争う物音がして。
「やめろ、葉山!!!」
遠坂の悲痛の叫びに、俺は煌と顔を見合わせ、出てきたばかりの部屋に戻る。
そこで見たのは――
「櫂様……」
憤怒の形相で手を上げている桜と、
後から羽交い締めのように桜を制する遠坂と、
恐怖に顔を青ざめている須臾。
誰が誰に何をしようとしていたのか、
一目瞭然な光景。