あひるの仔に天使の羽根を
 

手慣れた男の反撃に、私は苦もなく糸を手繰り、男を縛り上げる。


私の糸は敵を裂くだけではなく、使いようには鎖よりも厳重な縛めにもなる。


罠にかかったのは1人だけではなく。


5人の暗紫色の神父服。


何者か、私がこのまま口を割らせようか。


それとも玲様に任せた方が良いのか。


その一瞬の迷いが、油断を生んだ。


男達は次々に、奥歯に仕込んだ――毒薬で絶命したのだ。


身元を隠すのは、暗殺者の証拠。


紫堂を狙う敵なのか。



ふと顔を上げれば、不審げな顔でこちらを見ている芹霞さんで。


「桜ちゃん――だよね?」


何を今更――と思いながらも、ああ私は今男装していたのだと納得して。


橙色の馬鹿蜜柑は、櫂様と芹霞さん、そして遠坂由香の元に合流出来たようだ。



そして玲様が現れ――



あの女が現れた。



煌が弾いた女の武器は。



双月牙と呼ばれる、ブーメランにも似た飛び道具で。


余程手練れた者でなければ扱いは難しく。


なぜならそれは、全てが鋭い刃で作られて持ち方を誤れば、自分に牙を剥く。


更に櫂様の風の力を吸収出来るオプションまでついているようだ。


それを自由自在に操る白い修道服姿の女は――。


その金髪、金の瞳は――。


――ぎゃははははは。


"道化師"と名乗った陽斗によく似ていて。




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