あひるの仔に天使の羽根を
「!!! 紫堂、葉山が手をあげようとした理由は……」
「だけど……」
俺は、遠坂を無視して続ける。
「部外者が、芹霞のことを知ったように語るな」
途端。
部屋は奇妙な静寂に包まれて。
須臾は驚いた顔を俺に向けてきて。
「私は……」
「桜が本気を出せば、今頃血の海だ。
そうならなかったことに感謝しろ」
「櫂様……」
桜が震えた声を出してきて。
「これは紫堂を担う者としてではない、あくまで俺個人の意見だ」
そして須臾の身体を突き放せば、
案の定、須臾の目からぽろぽろと涙が零れ落ちて。
「私はただ……」
そう言うと、走って部屋から出て行ってしまった。
静まり返った部屋の中、
「どうして紫堂、須臾嬢の神崎への悪口が原因で、葉山が手を上げようとしていたのが判ったんだい!?」
驚愕に満ちた遠坂の声が響き渡った。
「あ!? そうなのか!?」
煌はそこで初めて事態に気づいたようだ。
「判るだろうさ。桜が口を開かないとなれば。
芹霞が悪く言われたことを、俺に聞かせたくなかったんだろ?」
俺はぽんぽんと桜の頭を叩いた。