あひるの仔に天使の羽根を
 

それから先の、須臾の言葉は私が聞くに堪えず。


清楚に象られた須臾の顔が、次第に蛇じみた顔に変貌していき。


何なんだ、この女!!


こんな女に芹霞さんの何が判る!!


同時に須臾によって穢されていく櫂様の想いを、私は見過ごすことが出来なくて、「憤り」という激情に、生まれて初めて私は流された。


私は反射的に手を上げていて。


衝動的なこの姿は、私がいつも毒づく馬鹿蜜柑のようで。



櫂様と芹霞さんの間に何かがあったのは私でも判った。



――芹霞、こんなに好きなのに!!



あの血を吐くような、悲痛な響きが頭から消えない。



いつも自信満々で、不敵で、完璧主義を遂行する櫂様のあの声は。


私も一緒に泣き叫びたい心地にさえさせるもので。



かろうじて、櫂様としての誇りを保持させたのは、遠坂由香を通した緋狭様の言葉。


本当にぎりぎりの処で、櫂様は崩れずにすんでいた。


2ヶ月前のように。


緋狭様には、櫂様がこうなることも予想の範疇内だったらしい。


遠坂由香は緋狭様から何を告げられているのか。


彼女は不測の事態に動じる様子はなく。


むしろ冷静に物事を傍観しているフシがある。


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