あひるの仔に天使の羽根を
部屋に戻った櫂様は。
ソファに横たわらせた芹霞さんの頬を愛しそうに…切なそうに人差し指で撫で上げた後、脱力したかのようにその両膝を床につけ、目線を低くした。
くったりとした華奢な手を取り、まるで彼らの絆といわんばかりに、彼の長い指を絡ませて強く握ると、櫂様は芹霞さんの手の甲に唇をつけ…そしてその繋がった手を自分の頬にあててそのまま俯いた。
まるで祈ってでもいるかのような、静謐なその光景。
そこには私は完全に異質な存在で。
私はただ佇むことしか出来なくて。
声を……息すら漏らすことを撥ね付けられる、聖なる空間。
やがて櫂様は――
「…好き…だ」
そう小さく…震えるように呟くと、芹霞さんを覆いこむように身体を伸ばして…
芹霞さんの唇に…櫂様の唇を合わせた。