あひるの仔に天使の羽根を


ここは各務。


当主は絶対的権力がある。



私は。


私の為に、櫂様は。


行けたのに。


櫂様は芹霞さんの処へ。


それなのに。



「……桜は大丈夫、ですから……」



芹霞さん。


無事ですか、芹霞さん。



ごめんなさい。



桜のせいで…櫂様…。



本当にごめんなさい。



私が行けたら…。



芹霞さん。


どうか無事でいて下さい……。



痛みの海に沈み行く意識の中で、



「煌、任せたぞ」



「ああ」



馬鹿蜜柑が走る音がした。



やはりいつもの元気はないけれど。


回っていた毒も解毒され、更に特殊な肉体が功を奏し、完全回復も時間の問題だろう。



煌が行くのなら。



必ず芹霞さんを護ってくれるだろうと


そう信じる自分がいることが…



何故か――



笑えた。

< 482 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop