あひるの仔に天使の羽根を
ここは各務。
当主は絶対的権力がある。
私は。
私の為に、櫂様は。
行けたのに。
櫂様は芹霞さんの処へ。
それなのに。
「……桜は大丈夫、ですから……」
芹霞さん。
無事ですか、芹霞さん。
ごめんなさい。
桜のせいで…櫂様…。
本当にごめんなさい。
私が行けたら…。
芹霞さん。
どうか無事でいて下さい……。
痛みの海に沈み行く意識の中で、
「煌、任せたぞ」
「ああ」
馬鹿蜜柑が走る音がした。
やはりいつもの元気はないけれど。
回っていた毒も解毒され、更に特殊な肉体が功を奏し、完全回復も時間の問題だろう。
煌が行くのなら。
必ず芹霞さんを護ってくれるだろうと
そう信じる自分がいることが…
何故か――
笑えた。