あひるの仔に天使の羽根を
「僕に?」
聞き返す少年――司狼くんに頷く。
「でもお姉さん。
僕は、僕だよ?」
判っている。
どんなに似ていても、陽斗は陽斗で、司狼くんは司狼くん。
それでもその面影を求めてしまうのは、陽斗が共に居ないという現実を今尚受け入れたくない、あたしのただの現実逃避。
「…陽斗ってどんな人?」
「んー。ちょっと頭弱くて、いっつもおかしなぎゃはぎゃはで。まともにごはん食べたことなくて、食べる時にはお箸を赤ちゃん握り。何故か手だけは器用で、まともに行けば料理人。かなりの汚な好きで、あたしの大嫌いな黒いてらてら光るあの軍団を大量に部屋に飼っていて、それでも平然としているような…」
暫し陽斗の思い出に浸って笑っていたら、
「それ、僕に似ているの?」
思い切り不愉快そうな声。
「うん」
思い切り返事をしてしまったあたしに、司狼くんは少し睨み付けてきた。
「…お姉さんって、変わり者だね」
「あー、よく言われる。何でだろうね?」
司狼くんは黙り込んでしまった。