あひるの仔に天使の羽根を

・暗闇 煌Side

 煌Side
****************


「!!!」


突如、背筋に流れたぞくっとした悪寒に俺は身を竦めた。



それは不吉な予感。



心臓がどくどく鳴り止まねえ。



「何か……あったのかよ!?」



誰がだ?


芹霞か?


玲か?



両方か!?



「……くそっ!!!」



よからぬ不安は膨れあがるのに、そんな心を収める身体は頼りなく。


体力だけが取り柄と桜に言われ続けてきた俺の肉体も、こんなにふらふらして安定感なければただの木偶の坊で。


気が焦るばかりで、息まで切れる。


正直。



またあの女の双月牙とか、桜をやったと思われるあの紫の神父服の男とかが出てきたら、無傷で突破できる自信はねえけど、だけど何とかしないといけない重責務を今は担っている。


櫂が芹霞と玲を俺に託したということは、重大だ。


桜が動けない今、こんな俺でも1人で何とかしないといけねえ。


俺は精神を研ぎ澄ませながら、暗くなり始めた砂利道を進んでいく。


――この時間、"中間領域(メリス)"に行くには正門を出て真っ直ぐお進み下さい。


荏原はいい奴かも知れない。


各務を飛び出した俺に、"真っ直ぐ"突き進むようにこっそり進言してくれた。


"この時間"という表現が気になったけど、きっと大したことでもねえだろ。


そして。


――"中間領域(メリス)"においては"生き神様"に畏敬の念を示して下さい。


意味は判らなかったけれど、"生き神様"っていう呼称を胡散臭く感じるのは俺だけだろうか。


大体、"神"っていうのが此の世に生きて存在するのなら、こんな辺鄙な人工都市にお住まいになるっていうこと自体おかしいだろ。


どうしてそれを判っていないんだろ、ここの連中。


まあ、俺は神なんて信じちゃいねえけど。



< 501 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop