あひるの仔に天使の羽根を
俺はがしがしと頭を掻いた。
「仕方がねえよな」
俺は偃月刀を手にして、扉の前に立つ。
予想通り機械声の警告の声。
それを完全無視して、その扉らしき外壁を偃月刀で切りつけた。
今度は警告音が鳴り響く。
「さあ、派手に騒いでみせやがれ」
俺の期待に沿うように、騒ぎを聞きつけた男が数人出てきた。
"男"だ、"武器"だと騒いでいたのは神父服の男。
黄色い神父服。
こいつらか、玲を連れ去ったのは。
見た所、素人だ。
こんな男達に玲は連れられたのか。
無理やりではないにしろ、玲に思惑があったにしろ、俺にとっちゃ同じこと。
敵を抑えつけて"中間領域(メリス)"への生き方を聞き出そうとしていた俺だったが、突如湧いた怒りの方がそれを増してしまった。
俺を取り押さえようとした腕が伸びてくる。
俺は寸前で身体を反ってそれをかわし、対象物を失い前のめりになる男達を、片手を地面について身体を横転させながら足で蹴り飛ばした。
飛ばされた男は、後から湧いてくる男達の渦の中に落下する。
それを待たずして俺は身を屈め、偃月刀の刀身で波のように襲い掛かる男達の腹を順次叩きつけていく。
2つ折になって崩れ落ちる男達。
そして偃月刀を地面に突き刺せば、その衝撃波によって男達の数は半減した。
ふらふらな俺の相手にすらならねえ。
男達がざわめき、1歩後退する。
俺は偃月刀を地面から引き抜き、右肩に担いだ。
「で、次は誰よ?」
こんな処で時間食っているわけにはいかねえ。
――パチパチパチ。
明らかにやる気の無い拍手の音に振り返ってみれば、小学生くらいの背格好の子供だ。
黄色い男達はざわめきながら子供に道を譲り、子供は悠々とその中を歩いてきて。
白い神父服の子供。
忌まわしいあの女と同じ白い色。