あひるの仔に天使の羽根を
――BR002。
懐かしい呼称が、幼少時の記憶に滑り込んで再生される。
――実験サンプルBR002の身体を切り刻み、回復速度を測定せよ。
ああ――
――水に沈めて電気を通し、その耐性を測定せよ。
"測定"という名の実験の毎日に。
俺から"感情"が消え失せてきて。
痛みと共に時間が経てば回復出来る肉体に。
延々と地獄の実験は続いていって。
――ぎゃははははは。
陽斗。
――オリジナルは不完全…BR002には更に……を。
――……は……を再現させよと。
やさぐれたお前の気持ちが判る。
――所詮は……は作り物だから。
――有翼……には……か?
――BR002には……を試そう。
こんな記憶、俺もいらねえよ。
だけど俺には、
――如月煌と名付けよう。
紅皇……緋狭姉が居たから。
どんなに絶望に泣き叫んでも、
俺には救ってくれた人がいるから。