あひるの仔に天使の羽根を
気づけば俺は。
そいつの背後に近づいていて。
地面には少年と思われる顔を半分残した、小さな肉塊が横向きに転がっていた。
思う存分嗜食したと思われる、その凄惨過ぎる肉の削がれ方。
死斑がまだ出ていない僅かに残された肌色を見れば、そんな昔ではない刻に、生きたまま食われたかも知れない。
背中と思われる皮膚には、焼き印のように刻印された英字…"bub"だけ読み取れる。
――"生き神様"の"食べ物"だよ?
ああ、この奇怪な物体は――
――"生き神様"も、ずっと男の堅い肉ばかりしか口にしていなかったから、
人間を食らう"生き神様"なのか?
だとしたら芹霞は!?
――女性の柔らかいお肉にありつけて、きっと喜んでいると思うよ。
俺の芹霞は!!!?
その時、それがこちらを向いて。
黒いぬらぬらとして粘着じみた表面を持つそれは、
まるで黒いアメーバのように。
そこに埋め込まれた、狂った位置にある目玉。
口と思われる…ぱっくりと裂かれた部分からは真紅の液体を垂らして。
奇怪な鳴き声は確かにそこから漏れている。
そしてそれは。
威嚇のように、裂け目を拡げた。
びっしりと生えた鋭利な牙。
「!!!」
両脇から伸びた…手と思われるべき中途半端な突起の先には
ぐったりとした――
「芹霞!!!」
そう。
修道女服を着た芹霞がいて。
今まさに――
そいつに食べられようとしていたんだ。
「芹霞!!!!」
俺はありったけの声を上げて
偃月刀でそいつに切りつけた。