あひるの仔に天使の羽根を
樒は派手な美貌をもってはいるが、化粧が濃くどちらかといえば"作られた"感が大きく、それならば化粧していない須臾の方が美しい部類に入るだろうが、その須臾すら遙かに凌駕する久遠の中性的な美しさ。
人を…性別を超えている。
玲も中性的で綺麗な顔立ちをしているが、類を異とする。
あんな堕落じみた、廃れた空気は持たない。
久遠は晩餐会に同席していなかった。
いつも部屋食を敢行して、家族と共に食事をしたことがないらしい。
その方が俺にはありがたい。
久遠と顔を付き合わせてする食事など、絶対嫌だ。
それなら須臾な触られながらする食事の方がマシだ。
あの男は、初見で俺が芹霞が好きだと見抜いていながら、俺の怒りを煽ることばかりする上、はっきりとした敵意を向けてくる。
最初からそうだった。
気だるげでやる気ない表情で、その目だけは挑発的な光を湛えて攻撃的で。
たかが数日会ったばかりの男が、12年来の付き合いがある俺より芹霞との繋がりがあるとでもいわんばかりの傲慢さで。
芹霞が心を許しているのは自分だというように、だから自分は俺のように追いかける側ではなく、追いかけられる側にいるのだと…その優位性を見せつけて俺を馬鹿にするように。
ありえない話なのに、それを俺は無視出来なくて。
あいつの存在自体を消したくて仕方が無い。
目障りで仕方が無い。
あいつは――
煌が攻撃した時
煌をわざと軽く弾いた。
俺が温室で殴った時
最低限の打撃をわざと受けた。