あひるの仔に天使の羽根を
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結局俺は、樒の挑発のような話題を無視して肉を口にする前に――



「須臾!?」


須臾が突然ばったりと倒れてしまい、晩餐会は中断された。


極度の精神疲労による、軽い貧血らしい。


須臾には昔からこうした貧血があるらしい。


俺のせい、だろうか。


俺が須臾を拒んだから?


だけどあの時俺は、桜を悪者にすることだけはどうしても出来なかった。


そして芹霞を貶(おとし)めた須臾にも我慢出来なかった。


俺の精神も疲労を迎えていたのだろう。


遅かれ早かれ、須臾を俺から離す気でいたから、俺自身は須臾ら同情して寄り添う気はなかった。


だが、樒はそれをよしとしなかった。


どうやら俺が須臾を誑かしてその気にさせて、フッたと思っているらしい。


多少語弊はあるけれど、結果的にはそうなのかも知れないと、俺は樒のヒステリックな金切り声を受けた。


途中、千歳と荏原が仲裁に入ってきたけれど、樒の怒りは鎮まらない。


それが母の愛からならばまだ判る。


「須臾が寝込んで儀式が出来なくなったら、どう責任とるつもりなの!?」


だが――

娘がどうのよりも、"儀式"。


そして儀式が済んだ後の"祭"。


祭で須臾は重要な"巫女"としての役目を果たさねばならないらしい。

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