あひるの仔に天使の羽根を
「ねえ、君は晩餐の肉、食べた?」
突然話題を変えられ。
「肉?
口にする前にお前の妹が倒れた」
そう訝しげに答えれば。
「へえ――…
悪運強いね、紫堂櫂」
そう意味ありげに笑われた。
「だけど他の奴らはどうかね?」
どくん。
心臓が大きな音を立てた。
「"玲"も"せり"も運があればいいねえ。まあどうなってもオレには関係ないことだけど。
あ、言っとくけれど、あの病人がいる限り人質だと思っていた方がいいよ?
まさか樒さんが好意的に本家に置いておくわけないでしょ。君達は軟禁されているんだよ。出ていこうとした途端、"約束の地(カナン)"の住人が樒さんの号令で敵になるって思っていた方がいい。
馬鹿だよね、本家に来るなんてさ。
あの女は…そして須臾も、かなりの魔性の肉食系だから。
狙った獲物は絶対離しはしないよ?」
そして腕を解いて、俺を真っ正面から見据える。
俺は――
「せいぜい苦しめばいいさ、紫堂櫂。
ただの"代わり"のくせに、出過ぎた真似するから」
久遠から、明確な敵意を受け取った。