あひるの仔に天使の羽根を
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金色の瞳。

金色の髪。


――芹霞ちゃんよー。


紫堂の研究所で"死"に耐久ある身体を散々弄られ、紫堂に…紫堂を担う櫂に憎悪を抱きながら、その幼馴染であるあたしの犠牲になった陽斗。


あたしの意思で、櫂に血染め石を返した2ヶ月前。


それに対し、あたしには後悔はない。


櫂を救うためならあたしの命など惜しくない。


それは昔からの真実。


だけど。


――ぎゃはははは。


陽斗は。


凄惨な過去を踏み越えた、新しい明るい未来が来るはずだった。


どんなに紫堂を憎んでも、あたしの大好きな人達の中ならば、"人間"らしさを取り戻して、普通の人生を歩めるはずだった。


――"陽斗"は生きたかっただろうね、お姉さん?


あたしが病院で目覚めた時、既に陽斗はいなかった。


それは言い訳にしか過ぎない。


判っている。


櫂の為にとしたあたしの行動が、結局は陽斗を追い詰めることになった。


それは、贖わねばならないあたしの罪で。


だから陽斗の分も生きなければと思った。


――陽斗を犠牲にして楽しく笑って生きている気分ってどうなの? 


贖うって何なのだろう?


――陽斗を完全過去にして平然と懐かしむのはそんなに快感?



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