あひるの仔に天使の羽根を


「ってえな……って、泣くな、芹霞泣くなよッ!!! 悪かった、お前を叩いて悪かったよッ!!! だから泣き止めって!!!」



おろおろする巨体の前で、あたしの目からは涙が激しく流れ落ちてきて。


「煌――

あたしやっぱり生きるの無理~ッッ!!」



「はあ!?」



「陽斗が――陽斗がッ!!!

やっぱりあたしは無理~ッ!!!」


子供みたいに泣きじゃくり始めたあたしに


「お前…チビ陽斗に何か言われたのか!?」


低い、威嚇じみた煌の声。


「……折角、落ち着いたと思ったのに、また芹霞乱しやがって、あいつッッ!!!

なあ、いいか。何度も病院で言ったけど、陽斗は……馬鹿ッ、何考えてんだよ!!!」


煌の傍らにあった偃月刀が目に入って、それを手に取ろうとしたのを煌に見つかり、手首を思い切り叩かれた。


「やだ、死にたいッ!!!」


「死んで陽斗が生き還るのかよッ!!?」


あたしは言葉に詰まり、代わりに更に大量の涙が滝のように零れた。


「だけどあたしが生きていたって、陽斗は還ってこないッ!!!」


「お前はそれで苦しみから解放されて万々歳かもしれねえけど、じゃあお前が死んだら残された俺達は……俺はどうすりゃいいんだよッ!!?

お前、残された奴の気持ち、痛い程判ってるんじゃねえのかよッ!!!?」


怒鳴られながら、がしっとあたしの双肩を掴まれた。


恐いくらい真っ直ぐの褐色の瞳。


「俺の世界からお前が居なくなって俺が平気だと思うわけ!!? お前死なせた罪から逃れる為に、お前と同じように後追って死んでやるからな。お前それでもいいんだな!!?」


「やだッ!!!」


そう言うと、煌はあたしを強く抱きしめた。


息が出来ないくらい強く。


「……死ぬなんて、軽々しく口にすんじゃねえよ」


その身体は少し震えていて。


少し鼓動が早くて。




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