あひるの仔に天使の羽根を
「こんな寒い処で、食うとか化け物とかそんな恐い話する煌が悪いんでしょ!!? それじゃなくてもあたし、家でホラー系のDVD見る時、抱き枕にしがみ付かないといけないの、知ってんでしょ!!? あんた身体でかいし体温高いんだから別にいいでしょ、減るもんじゃなし」
あたしは両腕を伸ばして、煌の脇腹を挟み込むようにして横から抱きついている。
今までそういうことがあっても、涙目のあたしを揶揄して笑うだけで、ただなされるがままだった煌が、最近はあたしからのぎゅうに過敏反応し、必死に拒もうとする。
「お、俺は体温は低いんだッッ!!!」
しかも真っ赤で、その狼狽は激しく。
「え? 肌熱いってば。じゃあ熱出してるの!!?」
「熱はとうに下がって……って、おいッ!!!」
「……やっぱ、凄く熱いよ?」
おでこ同志をくっつけて熱を測れば、煌の額が更に火のように熱くなってくる。
心配になってきた。
煌はまだ回復していないんだ。
それなのにこんな寒い処に居たら、身体によろしいわけはない。
「ちょっと休んで行こうか。玲くん直ぐに探したいのは山々だけど、こんな暗闇なら動くのも制限されちゃうし。辛かったら、寄りかかっていいよ?」
「ち、違うって。そんなんじゃなく……ああ、少しはもう、警戒心っていうものをもてよッ!!?」
何やら意味不明なことで詰られる。
「……警戒心? 誰に?」
あたしは頭を傾げて煌を見遣る。
「~~ッッッ!!!」
益々煌の顔が赤くなって、反対側に背けられた。