あひるの仔に天使の羽根を
「玲くんが仮にここを通り抜けたとしたら、通り抜けられる道があるってことでしょ? あたしは修道女だけが通れるっていう道で此処に至ったけど、煌がそんな道通るわけないよね? だとしたら、少なくとももう1つくらいは隠し出口みたいのあると思うんだけれど」
「……」
「ああ、どうしよう。考えてたら夜も明けちゃうよ。明けちゃったら"中間領域(メリス)"に行き来出来ないし。何とかしてどうにかしようよ。ね、煌。……煌? 聞いてる、煌?」
再び顔を真上に上げれば、今度は褐色の瞳はあたしを真っ直ぐに見下ろしていた。
痛いくらい真剣な光。
そうか、煌も考えてくれていたんだね。
だけどあたしと煌が考えた処で妙案なんて出るんだろうか。
ふと、不安になった。
「……あのさー」
ふいに真上から声が降ってきた。
煌の声と息があたしの髪にかかり、くすぐったくて思わず肩を竦める。
「俺……男なんだけど」
「は?」
期待していたあたしが馬鹿だった。
こいつは何にも考えていないに違いない。
考えていたら、どうしてこんな脈絡のない言葉が出てくるんだ!!