あひるの仔に天使の羽根を
「しかも俺、殆ど自制心ないし」
独白のような言葉は、尚も続いている。
一体、何だ。
真剣に考えるようなものか?
あたしに訴えるようなものか?
「判ってるわよ」
煌の堪え性のない短気さはよく判っているつもりだ。
今更、一体何だ?
「……じゃあ…さ、俺を煽ってる?
俺の理性…試してるわけ?」
煌は至って真剣らしい。
切迫しているような何かがある。
「は?」
「……だよな~」
何だかやるせないような溜息が聞こえた。
不機嫌そうに、がしがしと橙色の頭を掻き始める。
「あんた時々意味不明だよね。言い出して黙るのってよくないよ?」
「……いいのか?」
途端、向けられる褐色の瞳。
焦れたような、潤んだような瞳に、あたしは一瞬怯んでしまう。
「お前が……言ったんだからな?」
掠れた声が聞こえたと思った途端、あたしの両脇から煌の手が伸び、腹の前で両手が組まれた。
身体が凄く温かくなる。
否――凄く熱くなる。
更に。
どくどくと半端ない心臓の鼓動が、背中越しに感じる煌の胸から聞こえてくる。
狂いだすんではないかと思う程のその速さに、あたしは驚愕してしまう。