あひるの仔に天使の羽根を
 
「な、ななな何?」


声が裏返ってしまった。


身動ぎを、煌の手は許さない。


怪我をしているくせに、あたしの力ではびくともしないくらいには回復出来ているらしい。



あたしの首元に、煌の顎が置かれた。



「……なあ、芹霞」


甘えたような…喘ぐような吐息に、あたしの髪が揺れた。



「ひゃあ!?

こ、煌。そこで喋らないで。ざわってくる」



思わずあたしは上擦った声を上げた。



「……。……ふぅ~っ」



「!!!

い、息吹きかけるな、変態ッ!!!」



あたしは肘を煌の腹に入れた。



「――っ!! へ、変態って……」



何だか泣きそうな弱々しい声。


煌は"変態"という単語に弱いらしい。



「……ひとまず出よ。此処に居ても埓あかないし」



煌から返答はなく、代わりに更に強く抱きしめられた。



「この馬鹿力!!! く、苦しいって」



「あ……悪ぃ」



しかし弛めた力は少しだけ。


本当に悪いと思っているんだろうか。



「煌、行こうよ。身体も温まったし」


「……やだ」


ぼそり。


煌が駄々をこねた。


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