あひるの仔に天使の羽根を
「じゃあずっと此処にいるつもり?」
「それでもいい」
「いいってねえ……」
「ずっとお前と2人でいれるなら、此処に居てもいい」
ぼそぼそと耳元で声が聞こえて。
熱い息のような声音に何だかあたしの心臓まで早くなった気がして。
誤魔化すように、声早に叫んでしまう。
「あたしやだからね。此処何もないし、こんなトコ長くいたら、衛生上よくないって。何が嬉しくて煌と汚いミイラになんなきゃならないの。ほら行く。行くんだ、行け!!!」
「……。……俺、お前に話あるっていったろ?」
ぼそり。
ふて腐れたような声が聞こえた。
「……そう言えばそうだったね」
煌に背を向けての真剣話もおかしい気がするから、煌の完治してない腕を突っつき、飛び跳ねた隙に煌の拘束から逃れると、くるりと身体の向きを変えて、煌の真正面に正座した。
「いいよ、話して?」
しかし煌は苦しげに目を細めて俯いてしまうと、以降だんまり。
「煌?」
「……」
「どうした?」
「……」
「あたし待ってるんだけど?」
「……」
反応がない煌を下から覗きこもうとしたら、ぷいと顔をそむけられた。
「は!? 何その態度……って、あんた凄い赤いよ? 大丈夫!?」
首筋が真っ赤っか。
「……うるせえよ」
蚊の鳴くような小さい声。
あたしは思わず、野性的に整った精悍な顔を覗き見る。
「本当に大丈夫?」
凄い。
煌の顔を構成する全てが赤色だ。
どうしたんだろう。