あひるの仔に天使の羽根を
呆けたように固まるあたしを見ると、煌は依然赤い顔のままふっと柔らかく笑い、
「お前にだけの正当な欲望。
見境なく盛っているわけじゃねえからな」
そして――
あたしの手を掴むとぐいと引き寄せ
精悍な顔を斜めに傾けて
あたしの唇に熱い唇を押し付けた。
触れ合うだけのキス。
凄く煌の唇が熱くて、震えていて。
「本当はもっと凄いのしたいんだけど、さすがに俺にも"男"の事情があるというか何というか…。まだ理性あるうちにやめとかないと暴走止められねえし。こんな場所だし……」
ぶつぶつという声が聞こえる。
唇が離れても、あたしの頭は真っ白で。
ぐるぐると走馬燈のように8年間の煌が頭に流れる。
嫌われているとは思っていなかったけれど。
寧ろ好かれていると思っていたけれど。
それは――恋愛対象として!!?
煌が……あたしを!?
煌は――
真っ赤っかの性少年で。
櫂を崇拝する忠犬で。
緋狭姉の愛弟子で。
橙色に劣等感を抱いていて。
――お前以外の女、抱く気ねえから。
あたしは――
煌にどうされるの?