あひるの仔に天使の羽根を

・理解 櫂Side

 櫂Side
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"約束の地(カナン)"に来てから、時間が経つのがやけに早く感じる。


茜色だった空は漆黒の常闇色へと変わり、割り込んだ月光の黄金色も次第にその鋭さを失い始め、辺りは靄のような白の色彩を強くする。


夜が明けたのだ。


誰1人戻ることがないまま。


俺の懸念はピークに達し、よからぬ妄想だけが脳裏を覆い尽くす。


本当に無事なのだろうか、とか。


そして。


芹霞は誰と朝を迎えているのだろうか、とか。


芹霞が、玲や煌と合流出来たのなら。


それは安堵すべき嬉しいことのはずなのに、傍で助けたのが俺ではないという現実に、嫉妬に狂い出しそうになる。


玲を身代わりにしたのも、煌を芹霞の元に行かせたのも、この俺自身だというのに、苛立ちしか結果を残さない鬱屈とした現状に、叫び出したくなる。


こんなはずではなかったのに。


――離れていよう?


俺の想いを拒絶した芹霞のことばかり思い浮かぶ。


拒まれた原因が何なのかを突き詰めたいというよりは、ただ俺の苦しい想いをどうすれば芹霞が理解させることが出来るか、そればかりが頭に回る。


――泣いて縋ってそれでも駄目なら、いい加減身の振り方考えた方がいいんじゃない?


違う。


俺の伝え方が稚拙過ぎただけだ。


もう1度。


いや、芹霞が俺に応えるまで何度でも。



――望みなんかないんだよ、お前。


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