あひるの仔に天使の羽根を
「じゃあ……、
経験済みの世界ならいい?」
僕は――
煌の触れた頬に唇を寄せ、上書きをした。
湿った粘着音をわざと響かせる。
次には唇を――。
しかしその欲望を必死に殺し、口角に位置をずらして、舌でひと舐めすれば、
「!!!」
凄い。
芹霞が真っ赤だ。
「れ、玲くんッ!! その色気でからかわないで~ッッ!!!」
なんか余りにも可愛くて、僕は笑ってそこでやめた。
正直――
これ以上は、僕の自制がきかなくなる。
こんな処で、こんな格好で。
僕にだって見栄はある。
僕の一挙一動に反応してくれる芹霞。
女装しても、僕を意識してくれた芹霞。
嬉しい。
たまらない。
"僕"が少しずつ落ち着きを見せる。
我儘になるのは見ぬふりをして。