あひるの仔に天使の羽根を
形がはっきりと見えないものに苛立つ。
俺の知らぬ処で、何かが動いていることは判るけれど。
口に出さなくてもいいことを、わざと荏原が口に出したのだとしたら。
それは警告。
用意された朝食を取る気にはなれなかったけれど、それでもパンを無理矢理口に押し込んで、紅茶で腹に流し込んだ。
少しでも栄養素を体内に送り込めば、不明瞭な思考も晴れるかも知れない。
考えろ。
事態を見極めろ。
ざわめく心を落ち着かせろ。
窓からは太陽が昇り。
そういえば此処では荒れた天気など見たことがない。
乗船していた時は大嵐だったのに。
そう思いながら、窓の景色を見ていると。
「海!!?」
窓の景色は確かに海で。
いや、"約束の地(カナン)"自体が海に浮か都市だから不思議なことではないけれど。
昨日は、温室がある草原が拡がっていたはずだ。
そしてそんな海辺を背景に、1人の女が歩いていた。
扇情的な赤色のカーディガンを羽織った女性。