あひるの仔に天使の羽根を
そんな命令めいたことを口に出した時には、きっと昔のように"あんた何様!?"と容赦ない平手が飛んでくるだろうけれど。
それでも俺だって男だし。
惚れた女を身も心も支配したい。
全て支配させてくれねえかな。
もっと俺のことばかり考えてくれねえかな。
もう少し。
甘いムードとか引き出せる状況であれば、俺の必死の告白も甘いものとして芹霞の心に響いたかも知れないけれど、幾分俺自身焦っていたこともあって、どさくさ紛れての感がぬぐえねえ。
だけど。
繋いだ手の、芹霞の緊張に汗ばんだ手の平を感じて俺は凄く嬉しくて。
思わず俯いてにやにやしてたら、
「もっと顔引き締めなさいよ、緊張感の無い」
そう芹霞に怒られた。
「まるで幼稚園児の遠足みたい」
「……うるせえよ」
じとっと睨めば、視線が交差した瞬間、芹霞が顔をそらした。
前のような冷たい無視ではなく、赤い顔をしての無視に。
「~~ッッ!!!」
駄目だ。
嬉し過ぎて溜まらねえ。
俺は熱い顔を抱えて蹲ってしまう。
本当に、今薄闇でよかった。
俺の顔の赤さは尋常じゃねえだろう。
意識されるのが嬉しくて仕方がない。
前みたいに、突発的な"ちゅう"という行為による意識……肉体的な刺激による反射のような反応意識というわけでもなく。
少しは関係あるかもしれねえけど、それ以上に精神的な面で意識して貰えているのが判ったから、あまりの喜悦にもう俺の心はどろどろ蕩けてしまって。