あひるの仔に天使の羽根を
「俺――思っていた以上に、芹霞が好きだ」
おずおずと後頭部に回した手で、芹霞の髪を梳かして毛先を弄くれば、芹霞がびくっとして固まった。
そして。
「……いつから?」
やはり擦れたような芹霞の声が胸元から届いた。
「今まで全くそんな様子なかったじゃない」
確かに。
していたのは殴り合いや言い争いがかなりを占める。
今更……だ、本当に今更。
今更どんな面して告るのか、俺が第三者だったらゲラゲラ笑い転げていただろうけど、
「あ……まあ、そのあれだ。秘密ということで」
二度惚れしている現状思えば、決して笑えない現実に俺は切実で。
んなこと、芹霞には言わないけどよ。
「……ふうん?」
納得したような、していないような。
俺の心を開放した"ほんの一部分"だけで判った気分になられるのも癪だ。
何だよ、余裕ぶって。
心臓ばくばくしながら真剣な告白が、それだけか?
「ふうんってさ、……お、お前はどうなのよ、お、おお俺のことは」
今は伝えるだけでいいと思っていたけれど、
芹霞の心もやっぱ聞いてみたい。
……でも芹霞の目は見れない俺。
「……手間のかかるクソガキ。純情ぶった性少年」
やっべえ。
思った以上に、すげえ心が折れた。