あひるの仔に天使の羽根を
こいつ――悪女か?
恨みを込めて芹霞の頬を抓った。
櫂がよく触る気分も判るけど、もっちりとした肌の感触が気持ちいい。
頬だけでこうなら、中身はどうなんだろ。
「……煌。何であたしの胸を見る?」
ひやりとするくらいの抑揚ない声音に。
俺は慌てて目線を上げた。
「腕、噛み付くよ?」
俺のやましい心を察知した芹霞は、俺の左腕をがしっと掴んだ。
「や、やめろよ?」
じたばたもがく俺の手首が芹霞のネックレスに触れ、腕環とアクセが擦り合う様な高い音を立てた。
「問答無用!!!」
絶対。
芹霞は悪女だ。
完全に緋狭姉の血を受け継いでいる。
悪魔の緋狭姉の血を受け継いでいる。
そう心で叫んだ時、
『余程、命を捨てたいらしいな――馬鹿犬めが』
稀代の悪女の声が心に響いてきた。