あひるの仔に天使の羽根を

「ひ、ひひひ緋狭姉!!?」



「……煌?」


その妹が、居るべきはずのない女の名前を呼んだことに動きを止めた。


狂ったとでも思ったのか。


違う、狂ってるのはお前達姉妹で……



『そんなに死にたいか、煌?』



幻覚じゃねえ。


俺、緋狭姉と心で会話している。


何でだ?


俺の目は、緋狭姉から貰った腕環に釘付けで。


確か2ヶ月前も同じことがあって。



緋狭姉がここで割り込んできたということは、


『お前の行動全て筒抜けだ、この発情犬が!!!

信じないなら、お前が芹霞に言った台詞を逐一ここで再現して見せようか?』



「やめてくれ、頼むからやめてくれッ!!!」



「煌!!!」


涙目でわめいた俺に、妹からは容赦ない平手打ち。


「幻覚でも見てるの、しっかりしてッ!!!」


幻覚ならいいけどよ。


あっちもこっちも神崎姉妹に俺はずたずただ。



で、何で緋狭姉と会話できているんだろう?


俺の偃月刀が顕現出来たのと関係あるんだろうか。


『私の紅石は、力を増幅出来る特殊能力を持つ。紅石と芹霞がつけた坊の闇石が触れた時、一時的にだが紫堂の異能力は蘇る。この地での闇の力は大きな意味を持つからな、相乗効果で私との遠隔感応(テレパス)も可能になった』


それなら早く言えよ。


判っていたら玲の結界で桜回復させれたじゃねえか。

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