あひるの仔に天使の羽根を
緋狭姉の力を同時に織り交ぜ、結界のような"俺"という輪郭を強固に保つ。
闇の中に、芹霞の存在を感じる。
芹霞に向かう闇があるのを感じる。
闇の力は巨大で、意識が直ぐに弾かれてしまうけれど、俺は懸命に同化に集中した。
俺は闇で。
闇は俺で。
それがたとえ刹那の時であっても。
芹霞に流れる闇の力に、俺の意識を混ぜ込むことが出来るよう。
扉を開く一瞬だけでも、俺が芹霞の使う素直な闇の力となるよう。
芹霞の身体を守る盾となるよう。
深層にいる俺とリンクする表層の俺。
「芹霞……目を瞑れ。目を瞑って俺を感じろ」
闇という俺を。
俺という闇を。
「感じたら俺と同化しろ。
俺はお前だ。
お前は俺だ――」
それは交わいのように。
肉体ではなく、精神レベルで俺は芹霞と同化する。
好きな女に溶け込み、好きな女が俺を受け入れる。
乱れた吐息。
それは俺のものか芹霞のものか判らない。
性的のような"結合"の興奮が、確かに生じている。
それが――ひと時のことでも。
俺が嬉しくないはず、ないだろう?