あひるの仔に天使の羽根を
 


「玲くん!? 玲くん!!?」


簡素なベッドに横たわる玲くんは。


陶磁のような白肌に、透き通るような病的な青白さを加えて。


いつもの魅惑的な微笑は失せ、苦悶の表情に呼応したかのように長い睫が小刻みに動いていて。


血色が悪い唇からは、乱れた浅い呼吸が漏れていて。


「……まだ……」


何か言っている。



思わず玲くんの唇に耳を寄せると、



「僕は……まだ……」



泣きそうになる。


従弟を案じているのだろうか。


優しい優しい玲くんは、こんなに包帯ぐるぐる巻きにされた状態で、尚も自分より他人を優先させるのだろうか。


煌は何も言わず立っていて。


そして、


「芹霞。もっと玲の名前呼んでやれ。お前ならこの"白い王子様"は目覚めるから。俺……玲に"貸し"にしてやるからさ」


「貸し?」


「……。俺がぶっ倒れずに櫂の傍に控えていれば、玲もこんなことにはならなかっただろうから。

……くそっ!!! 絶対、倍以上で返して貰う」


やり場のないようなぶっきらぼうな声音残し、


「おい、女。ちょっと面貸せ!!!」


可哀相に。


煌の八つ当たりの犠牲になった案内人は、煌に引き摺られて強制退去させられた。


煌を窘(たしな)めようと思ったけれど、今杞憂すべきは玲くんで。


彼女には心で謝っておく。

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