あひるの仔に天使の羽根を


「玲くん、聞こえる? 玲くん……」


あたしは身を乗り出して、必死に玲くんに声をかけた。


「……ぅ……ん」


切なげな吐息とその苦しげな顔に、不覚にもいつも以上の艶めいた色気を感じて心臓が高鳴り、はっと我に返って慌ててぶんぶんと頭を振って邪念を振り払う。


いけない。


煌のエロさに感化されてしまっている。


「玲くん……」


強い玲くんがこんなことになっているなんて。


玲くんの一大事に、どうしてもっと早くに駆けつけられなかったのだろう。


どうして異変に気づけなかったのだろう。


超能力の有無など関係なく、あたしと玲くんにある絆で感じ取れたのではないだろうか。


自分のことに精一杯になりすぎて、つまらぬことで心乱して。


「ごめんね、玲くん……」


どうしてあたしは玲くんを放してしまったのだろう。


玲くんはあたしの従僕でも何でもないのに、どうして煌の解決策を玲くんにお願いして無理させてしまったんだろう。


後悔ばかりが脳裏に駆け巡る。


2ヶ月前だって自分の無力さを痛感したはずなのに。


2ヶ月前だってこうした玲くんの苦しむ姿を見ていたはずなのに。


どうしてあたしは同じことを何度も繰り返す愚か者なんだろう。


「玲くん……目覚まして、玲くん……」


あたしの声が届くように。


玲くんに少しでも届くように。
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