あひるの仔に天使の羽根を
 
布団から取り出した玲くんの手にも包帯が巻かれてあって。


痛々しいその姿。


手が冷たい。


ぺたぺたと玲くんの肌を触れば、氷のようにひんやりしていて。


2ヶ月前を思ってぞっとした。


発作か、出血か。


何にしても暖を取らさねば、容態は悪化していきそうで。


こんなぼろぼろな薄い布団じゃ暖をとれない。


どうしよう。


どうやって温めよう。


そんな時あたしは、先刻震えて寒がったあたしが、煌に抱きつくことで暖をとったことを思い出した。


ひっつけばいい。



正直、煌ほど玲くんにぎゅうをしたことはないけれど。


少しばかり照れもあるけれど。


「仕方が無い。玲くんを温めてあげよう」


それしかあたしに出来ることはないから。


あたしは玲くんの身体を少しばかり奥にずらして、


「お邪魔します」


玲くんの隣に滑り込んで、横から玲くんにぎゅうをした。


懐の異物に最初こそ嫌がるような身振りをした玲くんだったけれど、離れないあたしに根気負けをしたのか、拒む体力もなかったのか、それとも少しずつ温かくなってきたのが心地よかったのか、抵抗しなくなった。


それどころかこちらを向いてあたしと向かい合わせになり、あたしの背中に手を回して、自分の胸にあたしを押し付けると、あたしの両足をまとめて両膝で折り挟むように身を丸めた。
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