あひるの仔に天使の羽根を
「な!!!」
玲くん、それは乙女にとっては刺激が強くないかい!!?
包帯から覗く鎖骨ライン付近に目が釘付けになってしまったあたしは、目を瞑りながら煩悩を退治するようにお経を唱えた。
考えない、何も考えない。
玲くんは。
女装すれば完璧女で通すことが出来る中性的な美貌を持つけれど、こうして触れ合えば、"男"以外の何者でもなくて。
あの女装で玲くんに惚れた男達は、さぞやショックがるだろうなど、どうでもいいことでも考えねばやっていけない。
玲くんのように胎児のような格好で眠るのは、母胎への回帰願望が強いということを聞いたことがある。
玲くんは寂しいのかな。
そういえば玲くんのご両親の話って聞いたことがないな。
そんなことを考えていると、異性としての意識よりも母性本能が勝り、あたしは手を何とか伸ばして鳶色の髪の毛をなでなでしてあげる。
年上のお兄さんの頭を撫でるなんて失礼かも知れないけれど、だけどあたしはそうして上げたい気がした。
あたしはここにいるからね。
安心して戻っておいで?
すると頭上で玲くんの顔がふっと弛んだ気配を感じた。
嬉しいんだろうか。
玲くんの身体も次第に温かくなってくると同時に、苦しげだった呼吸も少しずつ落ち着きを見せてきたようで。
温かく……というよりは熱を孕んだような温度になってきて。
更に玲くん、あたしを抱きしめる手に力入れてくるし。