あひるの仔に天使の羽根を
そして僕は覚醒した。
「………?」
――状況が理解出来なかった。
判るのは、僕の胸の中に芹霞がいるということ。
ああ……多分は。
僕の焦がれた願望が夢になったのだと、だから1秒でも長く幸せな夢の続きに浸りたいと、また目を瞑った。
「………」
だけど。
今まで嫌な夢を見ていたんだろう?
どこからが、どの夢なんだ?
そう思えば。
どう考えてみても、1つのベッドで抱き合っている今が現実で。
僕と芹霞が何でこんなに状態でいるんだ?
僕の身体がかっと熱くなる。
どうしてこんな状況になったのかは判らないけれど。
僕だって男だ。
好きな女が胸の中にいて、こんなに至近距離で強く抱きしめ合っていれば、すぐに離しはしたくなくて。
それ処か僕の意識の限界まで、もっともっと芹霞を感じたくなって。
僕の想いを力に変えて、芹霞を抱きしめた。
理性思えば、やばすぎる状況だって判っている。
僕の"男"が悦び狂っている。
もっともっとと騒いでいる。
そんな時、僕の中で芹霞はもぞもぞと動いてきて、じっとそれを見つめている僕に気づかず、口をぱくぱくし始めた。
僕のせいで呼吸が苦しくなったんだね?
そのまるで小動物のような愛らしさに、
「……可愛い」
思わず呟いてしまって、少し後悔する。
知らぬふりをしていれば、もっと長く芹霞の感触を楽しめただろうに。
このまま放したくはない。
少し動けば触れあえる唇に。
僕の心はざわめいて。
触れたい。
唇をまた貪りたい。
僕は蜜の誘惑に勝てなくて。