あひるの仔に天使の羽根を
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「何で芹霞が玲と一緒に寝てるんだよッッ!!!」


添い寝するような態勢で、腕にある芹霞の頭を優しく手で撫でていた時、突然橙色の男が乱入してきた。


やっぱり。


気配は薄々感じていたけれど、中々部屋にこないから気のせいかと片付けようとしていたのだけれど。


煌は煌なりの最大の譲歩で、外で悶々としながら僕と芹霞を2人にしてくれていたらしい。


僕を気遣ってくれたんだろう。


堪え性のない煌なりの、優しさ。


「静かにしろよ。芹霞が起きちゃうだろ?」


そう言えば、煌は不満顔ながらも声を抑えた。


そんな素直な心を見せつけられると、少しばかり掻き混ぜたくなってしまう。


これは"僕"の一面なのか、それとも、煌という男の性分か。


ベッドで上体を起こし、僕の腕の変わりに枕ともいえない代物を芹霞の後頭部に宛てて、それでも芹霞を愛でる手は止めなかった。


するとやはり案の定というべきか、怒りを堪えた真っ赤な顔で僕に激しい嫉妬の目を向けてくる。


こういう直球な感情表現が、面白い反面妬ましい。


まあでも、僕にそんな強い敵意向けてくるくらいなら、煌の体調は安心だ。


剣呑にも偃月刀を握り締めている左腕も、この分なら切り落とさなくてもいい。


一時はどうなるかと心配したけれど、さすがは煌。


「お前に"貸し"なんだからなッッッ!!!」


涙目で抗議する煌に、僕は目を細める。


「貸し? 借りじゃなくて?」


「違う~ッ!!! 離せってば、俺の芹霞を離せ!!!」


そう大股で駆け寄ってくる煌。


「……"俺の"?」


"僕"が挑発される。


剣呑な僕の声に、僕の腕に手をかけた煌の動きが止まった。


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