あひるの仔に天使の羽根を
 

「れ、玲?」


引き攣った顔をみせてくる精悍な顔。



「聞き捨て……ならないね。

いつから芹霞はお前のものになったんだ?」



「れれれ玲、ひとまずはお、落ち着け、な?」


「ん?」


首を傾げてにっこり笑ってみると、煌の顔は少し青ざめている。


「戻ってみる? 此の世とあの世の狭間」


煌はぶんぶんと頭を横に振った。


「遠慮しなくていいよ? 僕も少し運動したいし」


そう、握った拳に傍目でも判るくらいに力を込めた。


「じ、じゃあそこらへんで腕立てや腹筋しとけ? な?」


それでも煌の手は、芹霞を僕から引き剥がし。


僕の代わりに芹霞の手を握り、僕の代わりに芹霞を片腕に抱こうとしていて。


意識的なのか無意識的なのかは判らないけれど。


僕を目の前に、完全なる"所有欲"を顕示した。


いつになく大胆なその"見せつけ"に、僕は櫂の影をも彷彿してしまい、僕はいつも以上に苛立ってしまった。


そして。


気づいていても意識の表層に上らせまいとしていた、"あること"を無性に詰問したくなってくる。


返答次第では、煌だろうと僕は赦さない。



「……ねえ、煌」


「な、何だよ?」



「芹霞の首筋のマーキング。

誰がつけたものかお前知ってる?」



びくり。


大きな巨体が反応した。


< 605 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop