あひるの仔に天使の羽根を
「れ、玲?」
引き攣った顔をみせてくる精悍な顔。
「聞き捨て……ならないね。
いつから芹霞はお前のものになったんだ?」
「れれれ玲、ひとまずはお、落ち着け、な?」
「ん?」
首を傾げてにっこり笑ってみると、煌の顔は少し青ざめている。
「戻ってみる? 此の世とあの世の狭間」
煌はぶんぶんと頭を横に振った。
「遠慮しなくていいよ? 僕も少し運動したいし」
そう、握った拳に傍目でも判るくらいに力を込めた。
「じ、じゃあそこらへんで腕立てや腹筋しとけ? な?」
それでも煌の手は、芹霞を僕から引き剥がし。
僕の代わりに芹霞の手を握り、僕の代わりに芹霞を片腕に抱こうとしていて。
意識的なのか無意識的なのかは判らないけれど。
僕を目の前に、完全なる"所有欲"を顕示した。
いつになく大胆なその"見せつけ"に、僕は櫂の影をも彷彿してしまい、僕はいつも以上に苛立ってしまった。
そして。
気づいていても意識の表層に上らせまいとしていた、"あること"を無性に詰問したくなってくる。
返答次第では、煌だろうと僕は赦さない。
「……ねえ、煌」
「な、何だよ?」
「芹霞の首筋のマーキング。
誰がつけたものかお前知ってる?」
びくり。
大きな巨体が反応した。