あひるの仔に天使の羽根を

僕の心が冷えていく。


「ちらっと見えたんだよね、芹霞とキスした時」


「はあ!? キス!!? お、お前芹霞とちゅうしたのかよ!!?」


途端に攻撃的な面持ちで。


煌が今にも飛び掛ってきそうになった時。



「煩いなあ、もう」



不機嫌そうに芹霞が目覚めた。


「う、煩いってなあ、大体なんでお前が玲のベッドに……」


「玲くんの身体冷たかったんだもん。別にいいでしょ、なんだかんだ言って煌だってあたしの身体を暖めてくれたんだし」


眠そうに目をこすりながらぼそぼそという芹霞。


「……へえ、暖めた、ねえ? どういう感じに?」


微笑みを見せた僕に、芹霞の動きが止まった。


「教えてよ、今後の参考に」


僕が顔を近づけると、瞠目した芹霞が引きつった顔で引いた。


「い、いや……その…」


「芹霞、そんなことより玲とちゅうって何だよ!!?」


煌が芹霞の双肩を掴んで自分の方に引き寄せると、ゆっさゆっさと揺らす。


その動きに一瞬――芹霞の顔が歪んだ。


「芹霞、痛いの?」


僕の懸念の眼差しに、芹霞は大丈夫と笑う。


「本当? 身体に負担かかっているんじゃないの?」


そう手を伸ばせば、


「玲くん、包帯に血、血がついてるよ!?」


ああ、芹霞の鼻血を拭った部分だ。



「ああ、僕じゃなくて君のだよ。ベッドの中で結構出血してたから」



そういうと、煌が目くじらをたてた。



「玲!! ベッドで!!! 抱き合って!!! ちゅうをして!!! で!!! 

芹霞が出血したって一体何だよ、おい玲!!!」



「鼻血だよ?」


すっぱり言い切ると、煌は自分の思い違いに気づいたようで、ぴしっと固まった。





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