あひるの仔に天使の羽根を
 
「鼻血以外の出血なんてありえないじゃん、あたし怪我してなかったのに。優しい玲くんがベッドであたしを傷つけるわけないよ?」


そう芹霞が口にすれば、煌は変に照れたように赤くなる。


「いつもながら……際どい表現するな、こいつ……って!!! そんなことより、芹霞!! 玲とちゅうしたって何だよ!!!」


話題を変えて芹霞に詰め寄る煌。


まるでその姿は、妻の不貞を詰る夫のようで。


「俺がちょっと向こう行ってる間に、どうして玲とちゅうすんだよ。なあ、簡単にちゅうさせるなよ。ちゅうは俺と……」


詰問する権利があるのを主張するような、その切なそうな真剣な顔。


何?


僕は――愛人?間男?


「あ~、ちゅうちゅう耳元で煩いな、あんたはネズミかッ!!!」


何だそれ……。


「ひっで~。恋する少年はデリケートなんだぞ!?」


何で芹霞は――


「また"恋する少年"シリーズ!? 本当にデリケートな奴なら、多数の香水女を相手にしないでしょッ!!!」


煌の言葉を受け入れられてる?

何で煌は――


「!!! だ、だから言っただろ!? これからはお前1人だって……」


いつもみたいに心を隠そうとしてないんだ?


「そこにあたしを噛ませないでよ!!! 禁欲生活すんだよね!? 玲くんのちゅうは、あんたみたいなエロいちゅうと違うの!!! 大体あんた、ドサクサ紛れて先刻何回あたしにちゅう……」


「……芹霞にちゅう?」


僕の声に2人が固まった。



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