あひるの仔に天使の羽根を
 
「あ……俺……」


言い難そうに顔を歪め、言葉を濁す煌。


僕は判っている。


その"予兆"だってあったのだから。


煌自身が宣言していたのだから。


煌だって切羽詰まった状態だったのは判っている。


だけど。


僕だって切羽詰まっているんだ。


僕は、2人だけが共有する"何か"を持ったことが許せなくて。


2人は同じ屋根の下に長く暮らしてるんだから、2人しか判らない話があってもおかしくないこと、十分承知している。


だけどそれとは――意味合いが違うだろ!?



「何をしたんだって言ってるんだ!!! 答えろ、煌ッ!!!!」



湧き上がる衝動を止められず、僕は激しい怒りに身を呑まれた。



嫉妬、妬み、僻み。


何とでも言えばいい。


八つ当たりするなんて心の狭い奴だと非難すればいい。


だけど。


僕が出来ないことを僕の知らぬ間にやってのけた煌に、溜まらなく怒りを感じて。


そして。


何かが変わろうとする2人に溜まらなく焦って。

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