あひるの仔に天使の羽根を
我に返った時には、床の上に煌が正座していた。
「……芹霞に告りました」
そしてその隣には、同じように芹霞が正座していて。
「……煌に告られました」
2人は僕と顔を合わせない様、俯きながら小さい声で自白した。
僕の荒げた声は、それ程までに凄まじいものだったらしい。
"告りました"
出し抜かれた焦りに、心のざわめきが止まらない。
判っていたはずなのに、やりきれない思い。
"告られました"
それでもまだ、決定的な変化は無い。
まだ間に合う――まだ今なら。
僕は気づかれないように呼吸を整えて天井を睨み付けた。
「あの……質問いいですか?」
煌がおずおずと手を上げた。
「何」
不機嫌に僕は答える。
「お体の加減はいかがなんでしょうか」
そういえば。
僕は――
「平気だけど。そういえば月(ユエ)……月には途中会わなかった?」
どうして此処に居る?
確かにあの時の僕は、死んでいてもおかしくない状態で。
しかし今の僕には、精神が不安定なこと以外に取り立てて不具合はなく。
手当の為された身体。
発作の鎮まった心臓。
そして身体に残る微かな――力の痕跡。
認めたくないけどこの力は――。