あひるの仔に天使の羽根を
「月ちゃん、無事なの!!?」
それまで俯いていた芹霞が目をきらきらさせて顔を上げた。
そして僕と目が合った途端、気まずそうな顔をしてまた顔を伏せる。
僕はふうと溜息を零して、芹霞の前にしゃがみ込み、その頭をひと撫でした。
「ごめんね、恐がらせて。もう普通に戻して?」
すると警戒心を露わにさせた…びくびくとした上目遣いが僕に向けられ、僕はそんな表情を向けられたことに唇を噛みしめる。
僕のせいで怯えた芹霞がいるのがやりきれなくて。
気狂いの血は、芹霞までをも弾くのだと思えば、本当に泣き出したい心地だ。
「玲くん……ごめんね」
芹霞は僕が何に対し苛ついて、何に対して怒っていたのかは判っていない。
僕の気分を損なわせる"何か"に謝ってくる。
判ってよ。
――ひと言でいい。
"玲くんだけが特別だから"
そんな言葉が欲しいんだ。
そうすれば"僕"は安心出来るんだ。
僕は――
ひたすら望んでいる。
僕が君の特別になることを。
僕が君の永遠になることを。
それが伝わるように。
僕の愛が伝わるように。
ゆっくりと芹霞の頭を撫でて、僕は微笑む。
「仲直りしてくれる?」
すると芹霞は満面の笑みで頷いた。
可愛い芹霞。
僕の芹霞。
早く――僕のものになれ。