あひるの仔に天使の羽根を
「さっき煌が拾ってたの、蒼生(あおい)ちゃんのだったの!!? ああ、だから"動物にパン屑"……」
「ああ!?」
「怒らないでよ。じゃあ蒼生ちゃん来てるの!!?」
芹霞の中で、氷皇の呼称で"蒼生ちゃん"で固定しているようだ。
恐らく此の世で、今元老院の1人ともなっている彼を、プライベート名で呼べる恐いものなしは、芹霞とその姉の紅皇くらいなものだろう。
「多分、僕は氷皇に助けられ、結界で簡易的な回復措置をとられたんだと思う。じゃないと心臓だけではなくもっと全身切り刻まれて……もしかして何処か一部分だけでも欠損していたかもしれない。それくらい月の攻撃力は凄まじかった」
――食べていい?
「……ねえ、玲くんの包帯…模様入ってるの? 胸のとこ……」
突然芹霞が僕の胸に巻かれた包帯を指差して言った。
「模様……じゃねえな。それ、字じゃねえか!?」
僕は包帯を解きながら、覗き込んでくる2人と共に"文字"を追っていく。
『シバラクぶり~、お目覚めいかが、レイクン?』
何だか――げんなりしてきた。
『ロコツに嫌な顔しないでよ~。ははは。ヘンだって? んー、いじわるぅ。そういえばさ~。うふふふ。…耳障りな笑い方なんて酷いね、これは目障りって言うんだよ。可愛い芹霞ちゃんからはおはようのCHUくらいして貰えたかな?』
したのは僕だ。
『たまらずにしちゃったのは君の方か、このむっつりクン。ノシつきで君の元に芹霞ちゃんを贈呈した優しいお兄さんに感謝してね☆ ふふふ。律儀なレイクンなら、感謝はお兄さんの欲しいもので返したいんでしょ? 折角だからね…お兄さん今、欲しいのはランボルギーニのレヴェントンだよ☆』
「……煌。この包帯、その偃月刀で滅多切りしていいぞ?」
「了解」
「ま、待って!!! もうちょっと先を読んでみようよ、ね!!?」