あひるの仔に天使の羽根を
青系濃淡色3枚を重ね合わせた上品なドレープのカットソーは、玲くんが着たら一流ブランド品のような高級感が漂う。


下は紫紺のカーゴパンツで、ゆとりあるデザインのくせに、玲くんの足の長さや細さは損なわれることなく。


玲くんの普段着は、櫂のような無駄な装飾のないシンプルなデザインを好むだけに、こうしたデザイン的な洋服姿を見るのはかなり新鮮だ。


「玲くん、そういうのもいいね。モデルさんみたいで格好いい!!」


目を輝かせ口早に褒めると、「ありがとう」とはにかむように目をそらして言った玲くんの顔が少し赤い。


それを横目で見ていた煌が、不機嫌そうにあたしの名前を呼んだ。


振り向けば、何だか睨み付けるようなぎらぎらとした目があって。


「今度、俺の"格好いい"服を選べ」


「は? 前お店であたし選んだら怒ったじゃん。俺にはデザイン系は似合わないから1番動きやすいシャツとデニムでいいって」


「それとこれとは別だ」


どう違うというんだろう。


玲くんが声を忍ばせて笑い、煌は何だか怒っていて。


「行くぞ!!! 道は俺が作る。芹霞を頼むぞ、玲!!!」


煌のかけ声で飛び出たあたし達。


今まさに少女に刃物を突きつけ何かを聞き出そうとしていた黄色い神父達は、煌の偃月刀による素早い攻撃によって一斉に後方に吹っ飛び、その中を煌は突っ切るようにして外に出た。


外からも派手な音がする。


今まで瀕死だったのが信じられないくらいの活躍ぶりだ。


見ないでも判る。


煌の圧勝だろう。


「僕の後に!!!」


突然の玲くんの声と共に、玲くんは前方で立ち竦む少女の腕を掴み、後方にいるあたしの隣に引き寄せた。


同時に、煌の攻撃を逃れて玄関から雪崩れ込んできた黄色い神父達が、玲くん目がけて襲いかかってくる。


それなりの修羅場くぐり抜けてくれば、素人目でもどちらがどの程度強いのか、ある程度判ってしまう。


あたしでさえ判るのに、不用心にも決死の警戒領域を簡単に踏み越えてくる相手は、状況判断すらできない雑魚以外の何者でもない。


玲くんの相手をするには完全役不足だ。



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