あひるの仔に天使の羽根を
「ねえ、旭くんと月ちゃんは……」
その名前を出した時、少女が蒼白になってがたかだ震えだした。
「知っているんですか、その天使達を!!!」
それは異常なくらいの恐怖の体現。
「彼らは"混沌(カオス)"に棲む――何よりも恐ろしい天使。
彼らが生きている限り、私達人間は喰い殺されます」
「おいおい、あんなチビ達に……」
「貴方は知らないだけです!!! あの双子に、何百の"中間領域(メリス)"の人間が殺され、食料となってきたのか!!!
笑いながら――美味しそうに人間を食らう彼らの残虐さを!!!」
あたしは絶句。
引き攣った笑い見せる煌に、玲くんは静かに言った。
「煌。僕も殺されそうになったんだよ、月に」
そう、その事実がある限り。
少女の発言を冗談に出来ないんだ。
「旭達の視点、イクミ達の視点。どちらかの視点でみる限り、彼らは天使にも悪魔にもなり得る。どちらかが真実となるんだ。例え旭達にその主観がなくとも」
「じゃあ、どっちなんだよ、チビ達は――」
玲くんは答えなかった。