あひるの仔に天使の羽根を
本当に今更。
俺は煌に対して――
嫉妬に胸が焦げ付きそうだ。
俺は胸に手をあて、服地を荒く掴む。
よろける体。
冷たい壁に背中を凭れて、ぎりぎりと歯軋りをした。
憎みたいのに、憎められない幼馴染。
――俺は、そこからじゃねえと、何も始まらない。
決死の覚悟というように。
あのタイミングでわざわざ俺にそう宣言した煌も、先に芹霞に想いを告げたという俺に煽られて、相当切羽詰ったんだと思う。
だけど。
余裕ないのは俺だって同じ。
――離れていよう?
煌は、そこまで俺が拒まれた事実を知らない。
芹霞は――
きっと煌なら拒まない。
俺だから拒まれる。
その理由が何かを理解できない俺。
だからそんな"俺"を理解させたい俺に遠坂は言った。
――押し付けがましいんだよ。
無意識に唇を噛んでしまっていたらしい。
口腔内が鉄の味がする。