あひるの仔に天使の羽根を
回る。
くるくると回る。
着物の袖を裾を振り乱し、
軽く結った髪は黒く解けて。
それは狂気。
どこまでも狂気。
俺は目眩を感じる。
「ねえ……紫堂様。私がどうして"聖痕(スティグマ)の巫子"になれたのかお判りになりますか?」
愉快そうな眼差しを俺に向けて、動きを止めた須臾は帯止めの石を指で触った。
「私が、守護石を扱えるから」
「え?」
――どちらか1つでも欠ければ、各務がその力を失うばかりか、この土地自体無秩序の混沌へと戻り、原始の……あるべき姿へと還るでしょう。
「各務の中でも石を扱える人間は限られています。だけど私は生まれつき、石を扱うことが出来た。石の……告げる未来を見ることが出来る」
「未来?」
「うふふふ。私と紫堂様の未来。私のものになる紫堂様」
ありえない。
俺は須臾を選ばない。
「それは残念だが、外れたようだ」
俺は薄く笑う。
「未来は絶対的よ、紫堂様。私の力は外れないの」
「じゃあ芹霞の未来を見てみろ。必ず俺が居るはずだ」
しかし須臾は意味あり気に笑うだけ。
俺は気分を損ねて目を細めた。
「うふふふふ。彼女が寄り添うのは紫堂様ではないわ」
そう断言した。