あひるの仔に天使の羽根を
「刹那様は極度の人嫌いで、出入りが許されている外部者も私ぐらいなもの。…よかったですね。実は私刹那様に、こんな簡単に皆さんも家に入れて貰えるとは思っていなかったんです」
この女、すげえ度胸してるよ。
確証もないのに此処連れてきて、俺等が此処潜ろうとした途端、攻撃されたらどうするつもりだったんだろう。
「結果オーライということだね」
そう芹霞は純粋に喜んだけど、俺見ちまったんだよ。
玲が意味ありげな笑いをこっそり口許に浮かべているのを。
もしかしたら――
俺達許可されていなかったんじゃねえか?
玲――
電気の力で……"コード変換"って奴で、プログラム書き換えたんだろ?
きっと……そうだ。
石だけではなく、玲の身体自体が、うっすらと青光に包まれているのは、見間違いじゃねえ。
顔なじみのイクミでさえ、3種類の認証が必要だというのに、何処の馬の骨か判らねえ俺達が、名前言うだけで通れるはずねえよな、よく考えれば。
玲の手にかかれば、セキュリティなんて丸裸だ。
玲が泥棒なんかになったら、天下無敵だ。
そうにやにやしながら歩いていると、芹霞が変な顔で俺を見ていて。
変態の称号を戴く前に、俺はきりりと顔を引き締めた。
どうも俺は、楽しいこととか嬉しいこととか考えると、顔に出てしまうらしい。
桜がいなくて良かったよ。
いたら確実に殴られている。